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第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌

第10節:嵐山町誌

四、村の地名

第1節:地名の由来

 村の名や、字(あざ)・小字(こあざ)の名、その他特定の地点や地域の地名は、みな私たちの祖先が自分でつけた名前である。ここに住んでいた人々はその生活上の必要から、いま残っているような地名をつけたのである。人間の生活は鳥や獣、魚、野生の植物などを採ってくらしていたこともあるし、それが進んで一定の場所におちついて農耕をいとなむようになったり、それにともなって、衣食や信仰、制度法制などが、複雑になったり、整えられたりして進歩や変遷があった。又同じ農業といっても、水田を主とするもの、畑作を主とするもの、田畑を併せて耕作するものなどさまざまあって、その生活の様式もそれぞれ異っている。だから地名はそこに住む人たちが、生活上の必要から命名したものだといっても、その時と、その所と、その場合によって異ってくるわけである。世の中が進歩変遷すれば、その進歩変遷につれ、所がかわればその所にしたがい、戦争とか天災とか異常の事件が起ると、その事件にともなって地名のつけかたが異ってくるのである。生活がかわれば地名のつけかたも一様ではなかった。これを一口にいえば地名には昔の人々の生活のあとがしみこんでいるということになる。地名は地上に刻みつけられ書き残された歴史である。
 そこで私たちは、昔の村々にあった地名、いまもある地名をあげて、その起原、いわれ、意味などを考え、祖先の生活、村の歴史の一斑を探り出し、これまで述べて来たことの補足に資そうと考えるわけである。

『嵐山町誌』(嵐山町発行、1968年8月21日)
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