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嵐山町web博物誌・第1巻「嵐山町の動物」

第1章:嵐山町の動物たち

第3節:種の多様性

1.たくさんの種が、自然界の中で それぞれの地位を占めている

 ひとつの地域には、いろいろと異なる環境条件を持つ所があって、それぞれの場所に様々な植物や動物が見られます。そして様々な生きものが見られることを「種の多様性が見られる」と言っています。外見上それらは雑然としていて無秩序で、それぞれが何の関係もなく生活しているように見えます。しかし、実はたがいにいろいろな関係があって、複雑なかかわりを持ちながら生活していることが近年少しずつわかってきました。それらの中から食べ物(エサ)にかかわる生きもの相互の関係や自然界のしくみの一端を簡単に説明します。

 生きものの体はどんなものでも細胞で出来ています。そして各細胞内でその内容物の中でも重要な糖質やタンパク質、脂質などの有機物を分解し、そこで生じたエネルギーで細胞を活動させ生命を維持しているのです。したがって生命を維持し続けるためには、分解して減少した有機物を補充していかねばなりませんが、その補充のしかたが植物と動物では大変異なっているのです。

 植物はまず、環境から吸収した二酸化炭素や水という無機物を材料にして、太陽の光エネルギーと葉緑体の作用でブドウ糖(有機物)を合成します。この働きはいわゆる「光合成」といわれる作用で、自然界で無機物だけから有機物を作りだす唯一の作用です。

植物(生産者)のイラスト 植物は光合成で作り出した糖をもとにデンプンその他のいろいろな糖質や脂質をつくったり、簡単な窒素化合物と共にアミノ酸を作り、さらにタンパク質を合成して細胞の内容物の補充を行っています。しかし動物は葉緑体を持たず、光合成をすることも出来ません。そこでほかの生きものを餌として食べ、その体を作っていた有機物を消化(分解)して吸収し、それを材料としてエサに含まれていた有機物とは異なる形の、自分の体を作る有機物に合成しなおして補充しているのです。
 そこで、自然界ではそこにすむ生きもの相互の間に「食べたり・食べられたり」の関係が生じてくるのです。このような関係を「食物連鎖」といいます。

動物A(第一次消費者)のイラスト さて、一つの植物を食べるAの動物は一種類だけではありません。何種類もいるAの動物のそれぞれにそれを食べる何種類ものBの動物がいて、同じ事がBとCの間でも言えます。しかも元になる植物にも多くの種類がありますから、一つの生態系で生活している生きもの間の食べたり食べられたりの関係は網の目のように複雑な関係となっているので食物網とも言われています。

動物B(第二次消費者)のイラスト この食物連鎖の関係は生態系内での物質流転の関係とも考えられます。まず植物は光合成などの作用で無機質から生いきものが必要とする有機物を作り出すので、栄養段階では「生産者」と呼ばれています。それに対して動物はすべて、直接間接に植物の作り出した栄養物質を利用して生きているので「消費者」と言うことができます。そして直接植物を食べるAの段階のものを「第一次消費者」、それを食べるBは「第二次消費者」、さらにそれを食べるCは「第三次消費者」と言います。

動物C(第三次消費者)のイラスト 生態系には生産者、消費者のほかにもうひとつ「分解者」と呼ばれる生きものがいます。バクテリアやカビ等の仲間で、他の生きものの排泄物や遺体などを分解しながら生活しており、この作用で生物体を作っていた有機物は無機物になり環境へもどされてゆきます。このように自然界では環境内の物質は生産者、消費者から分解者を経て環境に戻され、ふたたび同じことをくりかえしてゆくのです。

個体数のピラミッドの図
 生産者、第一次消費者、第二次消費者、第三次消費者と栄養段階が進むにつれて、各段階の生物体の総量あるいは個体数などが減少する性質があります。これを生産者を底辺にして図に示すと上にゆくほど少なくなり、生物の総量を示せば「生態量のピラミッド」、個体数を示すものなら「個体数のピラミッド」と呼ばれます。